子供のスケボー、親はどこまで手を出すべき?長く続けるための関わり方
スケートパークにいる保護者の方を見ていると、いろいろな見守り方があります。
パークのすぐ近くに立ち、
「もっと膝を曲げて!」
「今のは違うんじゃない?」
「さっきのほうが良かったよ」
と、滑っている間も熱心に声をかけ続ける方。
反対に、子供をパークへ連れてきたら、あとは車の中で待ち、時間になったら迎えに来る方もいます。
では、子供がスケートボードを長く楽しみ、上達していくためには、親はどこまで関わるのがいいのでしょうか。
これは、スケートボードに限らず、子供の習い事において多くの家庭が悩む問題だと思います。
親としては、ケガをしてほしくない。
せっかく道具を買い、送迎をして、スクール代やパーク代も払っているのだから、できれば真剣に取り組んでほしい。
そう思うのは、すごく自然なことです。
ただ、良かれと思ってかけている言葉が、子供にとってはプレッシャーになっている場合もあります。
今回は、30年以上スケートボードを続け、これまで多くの子供や保護者と接してきた僕の経験から、親が関わるべきところと、本人に任せたほうがいいところについて書いてみます。
結論は「環境は親が握り、技は本人に任せる」
最初に、僕の考えをシンプルにまとめます。
親が判断するのは、安全、場所、時間、道具、送迎、費用など、子供がスケートボードを続けるための環境です。
一方で、どの技を練習するのか、どのくらいのペースで進むのか、今日は何をしたいのかといった部分は、できるだけ本人に任せます。
つまり、
- 親が握る:安全、場所、時間、道具、送迎、費用
- 本人に任せる:技、練習内容、上達のペース、楽しみ方
この線引きが大切です。
逆に、技には親が細かく口を出すのに、安全な場所や体に合った道具、休憩時間などが十分に考えられていないと、親子ともに苦しくなってしまいます。
親が技を教えられなくても、まったく問題ありません。
子供が安心して続けられる環境を用意することは、技を教えること以上に大切なサポートです。
なぜ、親はつい口を出したくなるのか
親が口を出すこと自体が悪いわけではありません。
そこには、いくつかの理由があります。
練習が全部見えてしまう
スケートボードは、子供が何を練習し、どこで失敗したのかが、すぐ近くから全部見えます。
板に乗れなかった。
同じところで何度も転んだ。
さっきできていたことが、急にできなくなった。
見えてしまうからこそ、「こうしたほうがいいんじゃない?」と言いたくなります。
しかし、スケートボードは失敗しながら、自分の体で感覚をつかんでいく遊びです。
大人から見ると同じ失敗を繰り返しているようでも、本人の中では、少しずつ足の位置や体重のかけ方を試しています。
その試行錯誤の時間も、立派な練習なのです。
お金と時間を使っている
デッキやヘルメットを買い、パークまで送迎し、スクールへ通わせている。
親が時間とお金を使っているからこそ、「せっかく来たのだから、しっかり練習してほしい」と思うのは当然です。
ただ、その気持ちが強くなりすぎると、子供は自分のためではなく、親を満足させるために滑るようになります。
「せっかく連れてきてもらったから練習しなきゃ」
「失敗したら怒られるかもしれない」
「できないところを見せたくない」
こうなってしまうと、スケートボード本来の楽しさが少しずつ失われていきます。
ケガをしてほしくない
スケートボードは転ぶことが前提の遊びなので、見ている親が不安になるのも分かります。
転びそうになった瞬間、思わず「危ない!」と叫んでしまうこともあるでしょう。
しかし、滑っている途中に突然声をかけられると、子供が反射的に親のほうを見て、かえってバランスを崩すことがあります。
危険な場所へ向かっているなど、すぐに止めなければならない状況は別ですが、安全に関する注意は、滑り始める前か、止まったあとに伝えるのが基本です。
親にもスケートボードの経験がある
親自身がスケートボードをしていた場合、自分の経験を子供に教えたくなると思います。
もちろん、一緒に滑ったり、楽しさを共有したりするのは素晴らしいことです。
ただし、自分が技をできることと、子供に分かりやすく教えられることは別です。
さらに、親子は距離が近いからこそ、同じ言葉でもコーチから言われる場合と、親から言われる場合では受け取り方が変わります。
親が言うと反発するのに、第三者から言われると素直に聞ける。これはスケートボードに限らず、よくあることです。
親が握るべき5つのこと
技術面を本人に任せる一方で、親にしかできないこともあります。
ここは遠慮せず、大人が責任を持って判断してください。
1.安全に関するルール
ヘルメットやプロテクターを着ける。
車が通る場所では滑らない。
初心者のうちは坂道へ行かない。
暗くなったら終わる。
こうしたルールは、子供の気分だけに任せてはいけません。
特に年齢が低いうちは、危険を事前に予測することが難しいため、安全の最終判断は親が行う必要があります。
「今日は着けたくない」と言われても、ヘルメットを着けないなら滑らない。
最初から家庭のルールにしておけば、子供にとってもそれが普通になります。
2.練習を終える時間
子供は楽しくなると、なかなか自分からやめません。
しかし、疲れてくると足に力が入らなくなり、集中力や判断力も落ちてきます。
転び方が雑になり、普段なら避けられるような転倒をすることもあります。
「あと一回だけ」
「次こそできそう」
そう言いながら何度も挑戦しているときほど、親が冷静に判断する必要があります。
子供が「もう少しやりたい」と感じているくらいで終わるほうが、次回も「また滑りたい」という気持ちを残せます。
開始前に終わる時間を決めておくと、子供も納得しやすくなります。
3.道具の状態とサイズ
スケートボードは消耗品です。
ウィールが削れたり、ベアリングが汚れたり、デッキが大きく欠けたりすると、乗り心地が変わります。
進みにくい板や、曲がりづらい板で練習しているのに、子供が「自分が下手だからできない」と思っていることもあります。
また、子供の体格に対して大きすぎるデッキは、重くて扱いにくい場合があります。
デッキを選ぶときは、身長、靴のサイズ、体重、経験などを確認し、本人に合ったサイズを選ぶことが大切です。
LESQUEでは、身長や靴のサイズなどから適切なデッキサイズを確認できるページも用意しています。
道具に詳しくない場合は、無理に自分だけで判断せず、スケートショップや経験者に相談してください。
4.続けられる環境
週に何回滑るのか。
どこへ行くのか。
誰と練習するのか。
送迎をどうするのか。
こうした環境は、特に小さな子供の場合、親の協力がなければ作れません。
上達には才能だけでなく、定期的に板へ乗れる環境が大きく関係します。
毎回長時間滑る必要はありません。
短い時間でも、定期的に乗れる場所と時間を作ってあげることが大切です。
ただし、家族の生活を無理に崩してまで続ける必要もありません。
親子ともに無理なく続けられるペースを探すことが、長く楽しむためのポイントです。
5.成長の記録
練習している姿を、ときどき動画で撮っておくことをおすすめします。
毎週見ていると変化が分からなくても、半年後や1年後に見返すと、姿勢やスピード、板の扱い方が大きく変わっていることがあります。
上達を実感できず、本人が落ち込んでいるときにも、昔の映像は大きな励みになります。
「前はここまでしか進めなかったけど、今はこんなに滑れているよ」
そうやって本人の過去と現在を比べてあげてください。
ほかの子と比べるのではなく、以前の自分と比べるための記録です。
本人に任せたい3つのこと
次は、できるだけ親が手放したほうがいい部分です。
1.どの技を練習するか
大人から見ると、「まずはこの技から練習したほうがいい」と思うことがあります。
しかし、本人が興味を持っている技があるなら、できる範囲で挑戦させてあげてください。
もちろん、明らかに危険だったり、現在のレベルから離れすぎていたりする場合は、止める必要があります。
ただ、「練習の順番として効率が悪そう」という理由だけで止める必要はありません。
スケートボードは、本人が「これをやってみたい」と思う気持ちが大きな原動力になります。
遠回りに見えても、自分からやりたいと思った練習のほうが集中でき、結果的に早く身につくこともあります。
2.上達するペース
スケートボードは、毎日少しずつ同じように上達するものではありません。
何週間も変化がないように見えたあと、ある日突然できるようになることがあります。
昨日できた技が、今日はできないこともあります。
そこで、
「昨日はできていたのに」
「もう何カ月もやっているのに」
「同じ時期に始めた子はできているよ」
と言われると、子供は自分のペースではなく、周りの期待ばかりを気にするようになります。
1回や1カ月で判断せず、できれば1年くらいの長い目で成長を見てあげてください。
変化がないように見える時期も、体の中では感覚を蓄積している途中です。
3.滑りたくない日の気持ち
子供が「今日は行きたくない」と言う日もあります。
体が疲れているのかもしれません。
最近うまくいかず、少し気持ちが落ちているのかもしれません。
友達と遊びたい日もあるでしょう。
一度行きたくないと言っただけで、「スケボーをやめたいんだ」と判断する必要はありません。
また、せっかく予定を空けたからといって、無理に連れて行く必要もありません。
休むことも、長く続けるためには大切です。
ただし、何度も続く場合は「なぜ行きたくないの?」と詰めるのではなく、
「最近、何か気になることある?」
「パークで嫌なことがあった?」
と、落ち着いて話を聞いてみてください。
声のかけ方を変えるだけで、子供の反応は変わる
同じことを伝える場合でも、言い方によって子供の受け取り方は大きく変わります。
例えば、次のように言い換えてみてください。
- 「違う、そうじゃない」ではなく「今の、自分ではどんな感じだった?」
- 「もっと膝を曲げて」ではなく「動画を撮ったから、あとで一緒に見てみよう」
- 「まだできないの?」ではなく「今はどこが難しい?」
- 「さっきのほうが良かった」ではなく「もう一回やってみたい?」
- 「あの子は上手だね」ではなく「前よりスピードが出るようになったね」
ポイントは、答えを先に教えるのではなく、質問することです。
指摘され続けると、子供は「正解を言われるまで待つ」ようになります。
質問されると、自分で考え始めます。
スケートボードでは、自分の体の感覚を自分で理解することがとても重要です。
親がすべての答えを与えるのではなく、本人が気づくためのきっかけを作ってあげてください。
「見守る」と「放置する」は違う
口を出さないほうがいいからといって、まったく関心を持たなくていいわけではありません。
子供は、技術的なアドバイスだけを求めているわけではないからです。
「今日、楽しかった?」
「何か新しいことをやった?」
「さっきの技、もう少しでできそうだったね」
そんな会話だけでも、子供は自分のことを見てもらえていると感じます。
大切なのは、滑っている最中に指示を出し続けることではなく、子供が話したいときに聞ける距離にいることです。
見守るとは、何もしないことではありません。
必要なときに助けられるようにしながら、本人が自分で挑戦する時間を守ることだと思います。
距離が近すぎると、子供の動きが固くなることもある
スクールをしていると、普段は楽しそうに挑戦しているのに、保護者が近くへ来た瞬間に動きが固くなってしまう子がいます。
保護者が怒っているわけではありません。
むしろ熱心に応援し、丁寧にアドバイスしています。
それでも子供にとっては、「見られている」「失敗できない」というプレッシャーになってしまうことがあります。
そんなときは、少し離れた場所から見てもらうだけで、また自分らしく滑り始めます。
これは「親がいないほうがいい」という意味ではありません。
関わる量ではなく、距離とタイミングの問題です。
滑っている最中は少し離れて見守り、終わってから一緒に動画を見る。
それだけで親子の衝突が減り、子供が自分で考えながら滑れるようになることがあります。
僕自身も指導する中で、良かれと思って言葉をかけすぎ、子供の集中を切ってしまった経験があります。
教える側にとって、必要なときに黙って見守ることも大切な技術です。
大会や大きな挑戦になれば、最後は親やコーチが横にいない状態で、自分で判断しなければなりません。
普段の練習から、自分で考え、自分で決められるようにしておくことが、最終的には本人の強さにつながります。
親が教えるとケンカになるなら、第三者を頼っていい
親子で練習していると、どうしても感情的になってしまうことがあります。
親は心配して言っているのに、子供は「うるさい」と感じる。
子供が話を聞かないと、親も腹が立つ。
帰りの車の中まで空気が悪くなり、楽しかったはずのスケートボードが親子ゲンカの原因になってしまう。
そこまで頑張って親が教える必要はありません。
技術的なことはコーチや経験者へ任せ、親は安全と環境を支える役に回っても大丈夫です。
親が言うと反発することでも、第三者から言われると素直に聞ける子はたくさんいます。
それは親を嫌っているからではなく、親子という近い関係だからこそ起こる反応です。
無理にすべてを家庭内で解決しようとせず、必要なところはスクールや経験者を頼ってください。
通えるスクールが近くにない方へ
近くにスケートスクールがなかったり、定期的にGrafferまで通うことが難しかったりする方もいると思います。
そのような方に向けて、Grafferオンラインスケートボードスクールも行っています。
普段練習している場所で動画を撮影して送ってもらい、その子のレベルや動きを確認しながら、今の課題や次に取り組む練習をアドバイスします。
親子だけで練習していると、
「どこを直せばいいのか分からない」
「次は何を練習すればいいのか分からない」
「親が言うとケンカになってしまう」
ということもあります。
そんなときに第三者からのアドバイスが入ると、親が技術的な指導役を抱え込まずに済みます。
技だけではなく、今のレベルに対して無理な挑戦をしていないか、練習の順番や考え方が合っているかも一緒に確認していきます。
近くに教えてくれる人がいない方や、自分たちだけの練習に不安がある方は、ぜひ活用してみてください。
まとめ:親の役目は、答えを教えることではなく、続けられる場所を作ること
子供のスケートボードに、親はどこまで手を出すべきなのか。
僕の考えをまとめると、次のようになります。
- 安全、場所、時間、道具、送迎などの環境は親が管理する
- どの技を練習するか、どのペースで進むかは本人に任せる
- 滑っている最中ではなく、始める前か終わったあとに話す
- 指摘するより、本人が考えられる質問をする
- 昨日の本人や、ほかの子と比べない
- 1カ月ではなく、1年くらいの長い目で成長を見る
- 滑りたくない日は無理をさせず、理由を落ち着いて聞く
- 親が教えることで衝突するなら、第三者へ任せる
- 関わる量ではなく、距離とタイミングを考える
親が技を教えられなくても、問題ありません。
安全に練習できる場所を用意する。
体に合った道具を選ぶ。
疲れたら終わらせる。
できたときに一緒に喜ぶ。
うまくいかないときは、焦らず話を聞く。
それだけでも十分なサポートです。
スケートボードは、自分で考え、挑戦し、失敗しながら少しずつ成長していく遊びです。
大人が先回りしてすべての答えを教えるのではなく、子供が自分で発見する時間を残してあげる。
少し離れて見守りながら、本当に必要なときには支えてあげる。
そのくらいの距離感が、子供がスケートボードを長く好きでいられる関わり方なのではないかと思います。
