モノが売れない時代に、スケートショップは何を売るのか
今日も一つ、新しいことを知りました。
パタゴニアについて調べていたら、正規取扱店はオンラインのマーケットプレイスでは販売を行っていない、という内容を見つけました。
最初に見たとき、
「なるほど、ブランドを守るためなんだろうな」
と思いました。
Amazonや楽天みたいな巨大なマーケットプレイスに商品が大量に並べば、どうしても価格競争になりやすい。
同じ商品なら100円でも安いところから買いたくなるのは普通のことです。
でもブランド側からしたら、ずっと値引きされて売られていたらブランドの価値を維持するのは難しくなる。
だから販売する場所をコントロールする。
これはブランド側から考えれば、すごく理解できます。
ただ、その一方で複雑な気持ちにもなります。
今までECモールを一生懸命やって、価格やサービスで競争しながら生き残ってきたショップからすれば、大きな販売経路を一つ失うことになるからです。
ブランドを守るための正しい判断が、誰かにとっては死活問題になる。
商売って難しいなと思います。
大手ブランドも楽じゃない
少し前にBurtonについての記事を読んだときにも、似たようなことを考えました。
ただ、改めて調べてみると、Burtonが「ショップへの卸を全部やめる」ということではありませんでした。
現在も正規ディーラーで販売しています。
一方で、Burtonが直営店や自社ECなど、消費者に直接販売するDTCを強化してきたことも事実です。
これも考えてみれば当然なのかもしれません。
昔に比べて、今は誰でもブランドを作れます。
Instagramで発信できる。
ネットショップもすぐ作れる。
少量でTシャツも作れるし、スケートボードだってOEMで作れる。
昔だったら「ブランドを作る」ということ自体にものすごく高い壁があったのに、その壁がどんどん低くなりました。
それ自体は素晴らしいことです。
僕らみたいな小さい会社にもチャンスがある。
でも世界中でスモールブランドが増えれば、それだけお客さんの選択肢も増えます。
大手ブランドだって楽じゃありません。
むしろ大手は、ちゃんとした製品を開発して、スタッフを雇って、広告をして、ライダーをサポートして、会社を維持しなければいけない。
いいものを作ろうとすれば当然コストもかかる。
それを例えばショップへ6掛けで卸して、さらにショップの利益を乗せて消費者に届けるとなれば、商品価格はどうしても高くなります。
一方で、SNSを見れば友達が作った小さなブランドの商品がもっと安く売っている。
だったら、
「こっちでいいじゃん」
となる人がいるのも当然です。
だから大手ブランドも、自分たちで直接お客さんに届けたくなる。
卸ではなく直販の比率を上げれば、同じ売上でもブランド側に残るお金は増えます。
社員も食わせられる。
ライダーもサポートできる。
次の商品も作れる。
ブランドを続けていける。
そう考えると、大手ブランドが直販を強化することを単純に「ショップを潰す行為だ」と批判するのもちょっと違うと思うんです。
みんな生き残ろうとしているだけなんですよね。
一番苦しくなるのはローカルショップかもしれない
ただ、この流れで一番難しい立場になるのはローカルショップだと思います。
ブランドが自社オンラインショップを持つ。
直営店も作る。
消費者はスマホから直接買える。
しかも翌日には届く。
だったら、
「わざわざショップに行く理由って何?」
となります。
これはスケートショップにとってものすごく大きな問題です。
だって、商品を並べているだけならオンラインショップに勝てないから。
在庫量でも負ける。
価格でも負ける。
営業時間でも負ける。
ネットショップは24時間営業です。
それでもローカルショップがなくなったら困る。
スケートショップって、本来は物を買うだけの場所じゃなかったからです。
「あそこのスポット今日滑れるよ」
とか、
「今夜みんなで滑ろうぜ」
とか、
「あの子最近めちゃくちゃ上手くなったよ」
とか、
大会があったり、映像の試写会があったり、ライダーと出会ったり、先輩からスケートを教えてもらったり。
そこからローカルのカルチャーが生まれてきた。
Amazonではそれはできません。
じゃあ、これからショップは何を売ればいいんだろう?
最近、僕はここをすごく考えています。
たぶん答えの一つは、
「モノだけを売らない」
なんじゃないかと思っています。
例えばスケートスクール。
子供が初めてスケートボードに乗れるようになった。
オーリーができるようになった。
大会に出られるようになった。
親御さんから、
「ありがとうございました」
と言ってもらえる。
そこには、商品とは違う価値があります。
ありがとうに対してお金を払ってもらう。
これってすごく健全な商売だと思うんです。
別にスクールだけじゃありません。
夜になったらショップにみんなが集まってゲームしてもいい。
酒飲んでもいい。
くだらない話して笑ってもいい。
映像を流してもいい。
イベントをやってもいい。
最近、スケートショップとバーが一緒になっている店もあります。
僕はすごくいいと思います。
そこへ行かないと体験できないものがあるから。
デッキだけ欲しいならオンラインで買える。
でも、
「あそこへ行ったら誰かいる」
「あそこへ行くと楽しい」
「あの人に相談したい」
という価値はAmazonには作れません。
オリジナル商品ももっと重要になる
もう一つは、自分たちにしかないものを作ること。
オリジナルデッキでもいい。
Tシャツでもいい。
ステッカーでもいい。
地元のアーティストとのコラボでもいい。
他のオンラインショップで価格比較できない商品を持つ。
これもローカルショップが生き残る方法の一つだと思います。
ただ、僕はそれだけでも足りなくなってくると思っています。
商品を作ること自体が簡単になったからです。
これからは、
「何を売っているか」より「誰から買いたいか」
がもっと重要になるんじゃないでしょうか。
インターネットが全部変えた
インターネットって本当にすごいです。
僕らみたいな小さな会社でも世界に商品を売れるようになった。
SNSで発信できる。
ブランドを作れる。
お店を作れる。
これは間違いなくチャンスです。
でも、その代わり世界中にライバルが生まれました。
大手ブランドも大変。
代理店も大変。
ショップも大変。
スモールブランドも大変。
たぶん、みんな大変です(笑)。
でも、この流れに文句を言っても昔には戻らない。
ブランドの直販はこれからも増えると思うし、オンラインで買う人も増えるでしょう。
AIがもっと普及したら、ブランドを作るハードルだってさらに下がると思います。
だから、この波を止めようとするより、
波の乗り方を考えた方が面白い。
スケーターなんだから、その方がいいですよね。
モノから、体験と「ありがとう」へ
これから価値が上がっていくのは、
人と会うこと。
教えてもらうこと。
一緒に遊ぶこと。
その場所に行くこと。
そこでしかできない経験をすること。
つまり「体験」なんじゃないかなと思っています。
そして、その体験の最後に、
「ありがとう」
と言ってもらえる仕事を作る。
それがこれからの小さなショップや会社にとって、すごく重要になる気がします。
商品を売るなという話ではありません。
もちろん商品も売る。
オンラインショップもやる。
オリジナル商品も作る。
でも、その真ん中に人を置く。
「ここで買いたい」
「この人から買いたい」
「またここに来たい」
そう思ってもらえる場所を作る。
それならAmazonや巨大ECと戦わなくてもいい。
価格競争から少し降りられるかもしれません。
ブランドもショップも大変。
僕らみたいな小さい会社も大変。
でも、たぶんこの変化は止まりません。
だったら文句を言いながら沈むより、変化を楽しみながら乗っていきたい。
そしてみんなで、
体験を作って、「ありがとう」でお金をもらって、ベーシックインカムが来る日まで生き延びましょう(笑)。
どうなるんでしょうね、これから。
でも、なんだかんだ面白い時代だとも思っています。



