「すごい」より「かっこいい」が残る時代に

自己表現が溢れる時代に、何をどう残すのか

今、自己表現をする人は本当に増えました。スマートフォン一つあれば、誰でも簡単に写真や映像を撮り、世界中に発信できる時代です。スケートボードに限らず、表現すること自体は特別なものではなくなってきていると感じます。

ただ、その中でふと疑問に思うのは、これからみんなはどんな自己表現をしていくのか、ということです。表現できる人が増えたからこそ、「何を表現するか」「どう残るか」がより重要になってきている気がします。

進化し続けるトリックとスピードの時代

時代のスピードはとにかく速く、誰もやっていなかったトリックはすぐに更新され、技術やパフォーマンスのレベルは年々上がっています。でもそれは未来として正しい進化だと僕は思います。先人たちが積み上げてきたものを超えていく力がなければ、発展は起こらないからです。

年月が経つほどに、誰もできなかったトリックは更新され、ステアは大きくなり、ハンドレールもどんどん長くなっていきます。限界を押し広げていく挑戦そのものは、スケートボードの大切な要素の一つだと思います。

「誰がやったか」を覚えている人はどれくらいいるのか

世界中に上手いスケーターは山ほどいますが、誰もやっていないトリックや、誰も飛んだことのない大きなステアを「誰がやったか」覚えていますか。Instagramを開けば映像は次々と流れ、昨日見た凄いトリックでさえ、今日には記憶の奥に埋もれてしまいます。

特にスケートボードをよく知らない人たちにとっては、技の難易度や危険度はほとんど伝わりません。ただ「すごいことをやっている」という印象だけが、ぼんやりと残るだけです。

「すごい」と「かっこいい」は紙一重

例えば、3段ステアで綺麗にバックサイドフリップを決めるのと、無理のある大きなステアでグダグダでもバックサイドフリップを決めるのと、本当にかっこいいのはどちらでしょうか。

そこに明確な正解はありませんが、「すごい」と「かっこいい」は必ずしも同じではないと思います。むしろ、見る人によって評価は大きく変わり、技術よりも雰囲気や印象の方が強く残ることも少なくありません。

情報が少なかった時代と、溢れすぎた今

昔は情報が少なかったからこそ、誰もやっていない、誰も入っていない、誰も飛んでいないという事実そのものが大きな価値になっていました。だからこそ、「こいつはやばい」「すげえやつがいる」と強く印象に残ったのだと思います。

でも今は、情報が溢れすぎています。すごいトリックは毎日のように更新され、驚きはすぐに日常になり、そして静かに忘れられていきます。

どうやって覚えてもらい、評価されるのか

では、この時代にどうやって印象づけ、覚えてもらい、自分の表現を評価してもらうのか。評価やブランド化を気にせず、お金を稼ぐことも考えないのであれば、好きに楽しく滑ればいいと思います。

ただ、もし「続けること」や「生き方としてのスケートボード」を考えるのであれば、少し視点を変える必要があるのかもしれません。

トリック至上主義は限界にきている

トリックの難易度はすぐに更新され、テクニックだけで勝負するのはかなり厳しくなってきました。テクニックはスケートパークで披露すれば十分で、ストリートで無理をする意味を見失ってしまうこともあります。

命や将来を削ってまでやるべきことなのか、一度立ち止まって考えるタイミングに来ている気がします。

原点に戻るという選択

それよりも今は、少し原点に戻る時期なのではないでしょうか。仲間とワイワイ過ごした時間、友達と車に乗って週末にスケートしに行った記憶、くだらない話をしながら同じ時間を共有したこと。

本来スケートボードが持っている楽しさや空気感は、そういうところにあったはずです。

スタイル、空気感、心に刺さるもの

そこに個人のスタイルやパフォーマンス、ファッション、尖った感覚、誰よりも馬鹿だったり、見ていて楽しい、心に刺さる何かが加わっていく。

黙々と「俺のスケートスタイルを見ろ」という時代や、「誰よりも凄いだろ」という価値観は、確実に薄まってきているように感じます。

場所よりも「中身」が評価される時代

これからは、見ていて気持ちいい、楽しい、かっこいい、おしゃれ、真似したい、そう思われる表現の方が確実に求められていくはずです。一度立ち止まり、自分が生まれ育った場所や友達、仲間、ローカルを振り返ることも大切になってきます。

東京に出る、海外に行く、それだけが正解ではありません。インターネットが発達し、世界が一つになった今、どこで誰が何をしているのかはすぐにわかるからこそ、輝くのは場所や規模ではなく、その人やチームが持つ中身なのだと思います。

個性こそが、未来につながる

これから重要なのは、上手くなること以上に、どんな個性を出すか。それはトリックの難易度や危険度ではなく、人柄や空気感、スタイル、生き方そのものかもしれません。

それが長く楽しく、自由にスケートボードを続けることにつながり、結果として人に覚えてもらえ、人気や評価、そしてお金にも結びついていく。

僕は、これからのスケートボードはそういう方向に進んでいくのではないかと感じています。

みなさんは、どう思いますか。

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